「読書をする子は学力が高い」という説は広く知られていますが、実際のところどうなのでしょうか?
また、学力向上に最適な読書時間はどのくらいなのでしょう?
読書が学力向上に与える影響
文部科学省が発表した「全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)」の結果によると、本や新聞などに親しむ子どもは、親の年収や学歴が低くても、学力が高い傾向にあることが明らかにされました。
実際、読書は、学力向上につながるさまざまな力を養います。
語彙力・読解力の向上
読書は自然と語彙を増やし、文章の構造を理解する力を養います。
本を読むことで、新しい言葉や表現を学び、それを日常生活や学習に活かすことができます。
特に読解力は、国語だけでなく他の教科の理解にも影響を与えるため、学力全般の向上につながります。
知識の蓄積
本にはさまざまな知識が詰まっています。
科学、歴史、哲学、社会問題など、幅広いテーマに触れることで、子どもの視野が広がり、思考力が養われます。
知識の蓄積は、問題解決能力を高め、論理的な思考を促す要因になります。
集中力と想像力の向上
読書には集中力が必要です。
長時間本に没頭することで、集中力を養い、学習にも役立つ習慣を身につけられます。
また、物語を読むことで想像力を働かせることになり、創造的な思考を促進します。
読書すればするほど頭が良くなるわけではない
しかし、実は本を読むのが好きなのに、成績が上がらない生徒というのは、わりと一定数います。
たくさん読書しているのに、なぜ成績が上がらないのか。
このナゾは人気ゲーム「脳トレ」の監修でおなじみの東北大学・川島隆太教授の調査研究で解明されています。
これは、小中学生4万人の「平日1日あたりの読書時間(雑誌漫画などを除く)」と「4教科(国語・算数/数学・理科・社会)の平均偏差値」を表したグラフです。
偏差値50以上が「成績上位層」、50以下が「成績下位層」を意味しています。
このグラフから、①の読書を「全くしない」または「10分未満」の子どもたちの成績が、偏差値50を下回っていることをみると、やはり読書は成績の伸びに良い影響を与えているといえます。
つまり、成績を上げるには、1日最低でも10分以上の読書が有効ということです。
しかし、注目すべきは、②の「1~2時間」の子どもたちの成績をピークに、③の「2時間以上」読書をする子どもの成績がガクッと落ち込んでいるという点です。
読書をすればするほど、右肩上がりに成績が伸びるわけではないのです。
効果的な読書時間とは?
上記のデータからも、学力を伸ばすのには、読書量ではないことがわかります。
では、学力をあげるために適切で効果的な読書時間はどのくらいなのでしょう。
毎日30分~60分が理想
研究によると、読書時間が長すぎると逆に集中力が低下し、理解度が下がることがあるため、30分~60分程度が最も効果的とされています。
特に、寝る前の読書はリラックス効果もあり、記憶の定着にも良い影響を与えることが分かっています。
短時間でも継続が重要
毎日10~15分の短時間でも、継続して読書をすることで効果が期待できます。
特に、小学生や中学生の場合、長時間の読書よりも習慣化することが重要です。
「毎日少しずつ読むこと」を習慣にすれば、学力向上だけでなく、本を楽しむ習慣が身につきます。
好きなジャンルを読むこと
読書を習慣化するためには何より「読書を楽しむこと」が重要です。
無理に難しい本を読ませるのではなく、子どもが興味を持つジャンルの本を読むことで、読書習慣が自然と身につきます。
最初は漫画やライトノベルでも問題ありません。
そこから少しずつ文章量の多い本に移行することで、読解力を伸ばしていけます。
おすすめの読書習慣
本を読む子に育ってほしいと願う親御さんは多いですよね。
しかし、子どもに「本を読みなさい」と言っている親自身が、スマホばかり見ていませんか?
まずは親が、本を読んでいる姿を子どもに見せていなければ説得力がありません。
おすすめの読書習慣は、つぎの通りです。
- 【読書タイムを決める】毎日の習慣として「読書の時間」を確保する。
- 【興味のあるジャンルを読む】子どもが楽しく読める本を選ぶ。
- 【家族で読書する】 親も一緒に読書することで、読書が楽しい時間になる。
図書館や本屋さんで子どもと一緒に本を選び、親も本を読む姿を見せて、今日読んだ本がどうだったか感想を伝える。
家族で本を楽しむ時間が増やせるといいですね。
まとめ
読書は学力向上に確かに効果がありますが、「毎日の読書時間の長さよりも、継続することが最も重要」です。
また、楽しく読書することが学習意欲を高める要素となります。
読書習慣を身につけることで、語彙力や読解力、知識が自然と増え、結果的に学力向上へとつながるでしょう。
引用文献:川島隆太監修、松崎 泰著、榊 浩平著 『最新脳科学でついに出た結論「本の読み方」で学力は決まる』 青春出版社
引用文献:読書活動と学力・学習状況調査の関係に関する調査研究(静岡大学)