先日、オンラインでの読書会に参加しました。
課題本を読んで、お互いに感想を述べあったり、子育てについての考え方や悩みを打ち明けたりと、とても有意義な時間が過ごせました。
改めて「親は子どもに何をしてあげられるのか?」ということを考える機会になりました。
『非認知能力』ってなに?
■非認知能力の大切さ
近年、多くの研究によって、IQや学力を高めるよりも「非認知能力」を高めた方が、よりよい人生を歩む上で重要だ、ということが分かっています。
やり抜く力・粘り強さ・誠実さ・楽観的なものの見方・好奇心・自制心のような能力のこと。
テストで測ることができるIQや読み書き計算の学力といった「認知能力」に対して、テストで測ることのできない内面の力、性格の強みを「非認知能力」と呼んでいます。
従来の学歴主義社会では、子どもには
「いい大学を出て、いい会社に入ってほしい」
というのが親の願いみたいな風潮がありました。
しかし、近年は、いい大学を卒業しても
引きこもってニートになる人がいたり、いい会社に就職できても
過労やうつ症状に悩まされる人がいたりして、
「学力だけがすべてじゃない」ということが世間一般にも
理解されてきたように思います。
そんな中で、注目が集まっているのが『非認知能力』です。
人間力ともいうべき「非認知能力」は、
学習などの勉強面においても、
やる気や継続力の土台となるので、
この力を幼少期から伸ばすことが、
将来「学力の高い子どもに育つ」
ことにもつながるという
研究結果も多くあり、教育分野でも
『非認知能力』をいかに育成できるかに
関心が高まっています。
■非認知能力をどうやって伸ばすか
今回のオンライン読書会の課題本は、
『私たちは子どもに何ができるのか――非認知能力を育み、格差に挑む』
ポール・タフ/著
高山真由美/訳
英治出版
本著では、多くの研究や保育・教育の現場事例をもとに、
・どうすれば、幼少期の親子関係のストレスが和らげることができるのか?
・どうすれば、問題行動のある子どもがいるクラスの成績を上げることができるか?
・自信のない生徒のモチベーションを高めるには、どうすればいいのか?
ということが紹介されていました。
読書会では、当日までに全員が課題本を読み、
感想を述べあうことが目的とのことなので、
読みながら、共感できた部分とか、
キーワードとなる言葉をメモ程度に
書き出しておきました。
また、主催者の計らいで、
参加者とは事前にLINEで、
軽く自己紹介や参加を希望したきっかけなど
を伝えていました。
今回の課題本以外にも、子育てで参考になった本
などを紹介し合っていたので、
PCの前にオススメ本もセットし、いざオンライン参戦へ。
オンライン読書会で考える
本の副題から、参加者は「非認知能力」について
以前から興味・関心を持っていて、
自身の子育てに取り入れている、
または子育てに取り入れたいけど
どうしたら育成できるのか知りたい
という思いから参加した
という方々ばかりでした。
参加者:東大卒のYさん(お子さんの年齢5歳)
参加者:教育関係者のHさん(お子さんの年齢1歳半、おなかにもう1人♡)
参加者:らぼ(子どもの年齢7歳、3歳)
はじめまして状態でも、「課題本を読んだ」こと、
「非認知能力に関心がある」ことに加えて、
「子育て中」という共通点があるので、
話題は絶えませんでした。
本の感想については、以下のような感じでした。
東京都:Aさん
【思ってたんとちがう・・・】
今回の課題本は、メンタリストのDaiGoさんが子育て系の話題のときにYouTubeでオススメしていて興味を持ち課題本に選びました。
子どもの「非認知能力」を育てるためには、こういう働きかけが効果的ですよとか具体例が載っているものと思っていましたが、読んでみると研究事例と学校現場での実践例ばかりで、期待外れな部分もありました。
家庭レベルで落とし込める内容は少ないながらも、「できてない部分を指摘するのではなくて、できているところや良かった点を何度も確認して褒める」というのは、自分の子育てでもやっていきたいと感じました。
東京都:Yさん
【非認知能力に答えはない】
「非認知能力」という言葉自体を知ったのも、つい最近で「非認知能力ってなんだろう?どうしたら育つんだろう」という「答え」を見つけようとしていましたが、そもそも、非認知能力は、数学のように公式があったり、親や先生が知識として教え込むというようなものではないというようなことが本でも書かれていて、「答えのない課題」だという気づきがありました。
東京都:Hさん
【教育現場では参考になる】
中学校で勤務しているので、職場で、どういう先生が生徒のやる気や才能を引き出しているのか振り返ったとき、やはり本著に書かれているような働きかけがうまくできている教師は、学級経営もしっかりしており、クラス全体の成績も良く、部活の指導者としても実績を残していると感じます。教育現場の視点で見ると、とても参考になる本でした。自分の子どもに実践・・・ということまでは、考えてなかったですね(笑)
沖縄県:らぼ子
【もっと具体的なのを期待してた…】
私も、主催のAさん同様に、子どもへのアプローチの仕方が書かれているものと思い、期待して読んだのですが、解決策は「国が政策を変えるべき」とか、「大人は考え方や行動を変えるべき」ということに行き着いていて、これを家庭で、個人レベルで具体的にどう行動や考えを変えればいいのか、自分の子育てに落とし込むにはどうしたらいいんだろう、と考えあぐねているところです。
今回の課題本の実例が、
国の対策レベルの大規模な
心理学実験であったため、
「自分の子どもにアプローチをかけるなら~」
というところまで落とし込むのに苦労しました。
その場でみんなで考えてみるも、
なかなか答えが出ない場面もありました(笑)
ただ、ヒントは、たくさんありました。
子どもの非認知能力を伸ばすヒント
①環境
本著では、子どもの非認知能力を高めるために
大事なキーワードとして『環境』というのが挙げられていました。
私自身は、『環境』に加えて
『タイミング』も重要であると考えます。
が、これはあくまで個人的な経験による意見なので、
メルマガにて紹介します。
気になる方は、こちらの記事もどうぞ♪
非認知能力は人から教えてもらったり、
学び取ったりするスキルではなくて、
環境や状況によって身につくもの
とされています。
ここでいう『環境』とは、
ただ単に居住地域が劣悪であるとか、
物理的なものを指すのではなく、
親や家族、子どもと接する
「周囲の大人たち」のことを
指していました。
周囲の大人との人間関係が、
「非認知能力」を高める重要な
環境要因となる点については、
参加者のHさんが、自身の経験から
「部活動の顧問の先生から受けた影響が大きかったから納得できる」
とおっしゃっていました。
確かに、たった1人の恩師との出会いで人生が変わったという話は、よくあります。
数年前にヒットした「学年イチの落ちこぼれだったのに、塾の先生に出会って、学力が上がって有名大学に入った話」のような「奇跡の大逆転合格!」を成し遂げる生徒を、私も予備校で勤務していたころは毎年みていました。
実は、そうした「奇跡的な合格」を成し遂げる生徒に共通する点が、
「非認知能力の高さ」だと個人的に感じています。
模試の結果が例えE判定でも、
すぐに気持ちを切り替えて、
「粘り強く」、「前向きに」、
次やるべき課題に取り組み続けることができる生徒は、
本番でも、実力以上のものを発揮しているようでした。
一方、A判定でも間違えた問題の分析や復習を怠ったり、
A判定以外の結果が出ると「もうダメだ…受かる気しない」など
弱音を吐いたり、模試の結果にメンタルが左右される生徒もいます。
こうした生徒に、粘り強い行動をさせるには、どうしたらいいのでしょうか?
②マインドセット
本著では、その粘り強さ、やり抜く力のカギは「マインドセット(心のありよう)」にあり、
以下の4つの信念を持たせることが大切だとされていました。
②私の能力は努力によって伸びる
③私はこれを成功させることができる
④この勉強は私にとって価値がある
つまり、周囲の大人が、
この4つの「メッセージ」を
子どもたちに発信することで、つまずきや失敗、
挫折があっても、「折れない心」が育ち、
学業においても粘り強さを発揮できるというのです。
特に、②と③は、
周りの大人が意識して声掛けすることが
大事なように感じました。
参加者の1人であるYさんは、
自身を「自己肯定感が高いほう」と
分析されたうえで、
周囲の人が1度のささいなミスを
注意されただけなのに、
まるで「人格まで否定された」かのように
落ち込み続けているのをみて理解できない
ことがあったのだそうです。
しかし、この本を読んで、そうした人たちは、
「マインドセット」がうまくいっていないのだと
腑に落ちたとおっしゃっていました。
③所属意識
この「マインドセット」のメッセージは、
学校生活で教師が行うだけでなく、
①の「私はこの学校に所属している」という所属意識を
「この家族の一員である」と置き換えるだけで、
家庭の育児でも応用できるのではないかと思います。
家族はいちばん小さな「社会」です。
家族で何かに取り組んだり、幼児期から家庭でお手伝いを経験させたりすることは、非認知能力を育むうえで有効なのではないでしょうか。
結局、非認知能力を育むために私たちは子どもに何ができるのか?
課題本は、研究事例が多くて、家庭に落とし込むにはどうしたらいいのか、
まとめるのが難しい内容だと感じていましたが、
1時間半の読書会で、本の感想だけでなく、参加者それぞれの職場環境や自身の育ち、
または各自の子育てについて語り合うなかで、
改めて本の内容が家庭での子育てとリンクできそうな気づきがあったので、
以下にまとめてみたいと思います。
◆環境づくり
親としてできることは、
「4つのマインドセット」が身につくような
『環境』を整えてあげることだと言えそうです。
- 子どもに「家族の一員である」という所属意識を持たせる。
- 家が子どもにとって「安心・安全な居場所」となるような信頼関係を築く。
- 子どもの興味関心に寄り添い、いろんなことを体験させる。
- 課題は自分で選ばせ、自分の意志でやっているという実感を持たせる。
- 子どもが失敗したらチャンスと捉え、そこから得られる学びに気づかせる。
- 子どもの能力や結果だけを褒めるのではなく、努力やプロセスを褒める。
- 親が子どもの能力を信じて期待をかけ、挑戦させる。
◆親の意識を変える
「非認知能力」は、子どもを取り巻く環境の”産物”
であるならば、アプローチをかけるべきは、
子ども自身ではなく、子どもを取り巻く『環境』。
つまり、子育て中の親へのアプローチが重要。
これは、私がこのサイトを立ち上げ、
親向けの子育て支援を始めたときの理念
「親が変われば、子どもが変わる」
とも一致しており、
個人的には自信となりました。
ただ、「〇歳までにこうしなきゃダメ!」
というような、子育てにがんばっている
ママをさらに追い詰める情報発信の仕方は
避けたいと考えていました。
それについても、主催者のAさんが
本著で共感した部分として挙げていた
うまくできている部分に注視して
「新しいことを覚えるのではなく、
あなたがすでにしていることをみればいい」
というのが親自身にも子どもにも
必要なメッセージだと感じました。
さいごに
読書会の終盤、参加者から、
平日の日中ずっと保育園に通っているので、
園ではどんな働きかけを行っているか
見えないし、わからないという不安の声が
あがり、お互い共感し合いました。
働くママという立場から
親が関われる時間が少ないなかで、
できることにも限度があることなど、
子育ての悩みや迷いを
打ち明けられた場面もあり、盛り上がりました。
はじめてのオンライン読書会、
有意義な時間で楽しかったです♪
企画・主催したAさん、参加者の皆さん、